壊れる少し手前の永遠

好きなバンドについて書いていこうと思います。

syrup16g 10/5 zepp tokyo 回顧録(2)

syrup16gのライブは、ファンは基本地蔵である」

私は再結成前のイメージを引きずっていました。
確かに最近は手拍子をする明るいファンもちらほら見られますが、まだ少数派。
自分の立った場所から一歩も動かずステージを凝視し、時に涙を流すのが基本スタイル。
そう信じていた私は、他のライブではまずしない、荷物を持ったまま最前ブロックに陣取るという愚行をおかしてしまいました。

周りにいた方には本当に申し訳ないことをしました・・・
ただ言い訳をすると、去年の徘徊ツアーで初日の金沢に行った時(この時も前3列目マキリン側、荷物はなし)の
後ろのカップルの会話が頭に残っていたのが原因なんです。

女「けっこう隙間あるけど誰もつめないね」
男「ライブ始まったらみんな一気に前行くから、もっと近くで見れるよ」

~ライブ開始
男「・・・あれ?」
女「誰もつめないね」

この時私は「そうか、syrupのライブならスタンディングの最前でもこんなゆったり見れるのか」という情報をインプットしてしまいました。

しかしこの日(zepp)は違いました。
客電が消えた瞬間、後ろからどっとかかる圧。
荷物を右手に持っていた私はあっという間に満員の山手線の邪魔な乗客状態に。
やばい、やってしまったとにわかに焦る私。
こんなことなら数百円のロッカー代をけちるんじゃなかった、と後悔するも後の祭り。
そういえば再結成後最初のツアーの初日の名古屋、真ん中のほうで見ていたので忘れていたけど前のほうはすごい熱狂的だったな、生還の後の弾き語りの時も押しつぶされたな、と記憶を掘り起こしながら個人的に初のもみくちゃ状態でのsyrupのライブが始まりました。

ステージに上がるメンバー。
マキリンの顎にはステキな髭が。初めて見た姿にテンションはいきなり上がります。
そして全員そろいの上下黒の服装。
中畑さんの金髪以外は真っ黒のステージ、葬式帰りのポリシックスみたいな印象を受けました。

始まったのはおそらく客全員が待ち望んでいたであろう、copyの一曲目「She was beautiful」。
16年前の曲はその美しさを少しも損なうことなくそこにただ存在していました。
となりの男性の頬には早くも涙の跡が。
荷物をぶつけてしまっている右の女性に心の中で謝罪しながらも、一瞬で心は歌の中に没入。

3曲目の「Sonic Disorder」のあたりで、ふっと体が軽くなるのを感じました。
気が付くと、私はライブ開始前に立っていた、ゆとりある前から3列目の場所に戻っていました。
あれ、と後ろを振り向くと、後ろの人と、そして左右の人ともある程度の距離が。
一瞬邪魔すぎて、もしくは耐え難い異臭(発していないと信じたい)で避けられたかと血の気が引きましたが、
前フロアを見渡すと全体的に余裕が戻っており、開演前と同じ状態になっていました。
察するに、新しいファンの方々が他のライブと同様に前に押し寄せた後、あれ、そういう感じじゃないのかなと元いた場所に下がったのでしょう。
やれやれ一安心、と荷物を足の間に挟みなおしてその後のライブを見ていました。

本編の曲は「My Love's Sold」以外全てcopy以前の楽曲たち(サイケデリック後遺症は確か初期のデモテープに収録されていたはず)。

これで最後だとやけくそで制作した「copy」によって図らずも道が開け、そして同時に初期syrupの終わりが始まった16年前のsyrup16gを現在に投影しようという明確な意図を持ったセットリストであると感じました。
16年前に一度満月を迎え、そして左側から少しづつ欠けていく十六夜の月へ。
そして月日は流れ、あの日以上の輝きを放つステージ上のsyrup16g

中畑さんはMCで「今27か28歳の人どれくらいいますか?」と客席に呼びかけ。
そして「僕らがそのくらいの時にcopyを作ったので、(27,28の人は)まだ大丈夫です」と一言。

私は今28歳。人生に行き詰っているどころか、悪い意味で開き直り始めている私にとってこの言葉は響きました。
そういえばエレカシの宮本さんが「悲しみの果て」を作ったのもこれくらいだったかな、と思い出しながら
人生(仕事や未来について)もう少し踏ん張らなきゃな、と思い直しました。
そして心の底からバンドをやりたいな、と改めて思い、ギターの練習を再開している今日この頃です(これも現実逃避な気がしないでもない)。

アンコールは「Share the light」「ニセモノ」「vampire's store」と解散・再結成前後の3枚から1曲づつ。
ラストはこれもcopy以前からある曲「落堕」。
現在と過去のsyrupを並列させる完璧に近いライブでした。

鳴り止まないダブルアンコールを求める拍手。そしてステージに戻る3人。
マキリンは「なんだよ、初日からめんどくせえな」と言いたげな表情をうかべ、周囲のお客さんは笑っていました。

この日、ものすごい欲を言えばラストの曲は「リアル」ではなく、「翌日」などのcopy以前の曲か、もしくは再結成後の曲で締めてくれれば最高だったな、と感じましたが、こんなことを考えられるのも毎年ツアーをやってくれるという奇跡が続いているからこそ。
この喜びだけは忘れず、また次の、未来のsyrupに期待できる日々が続くことを願うのみです。



Amazonで注文し、今日やっと届いた「delaidback」を聞きながらこのブログを書いています。
ツアー後半、これらの楽曲が聞けるのが本当に楽しみです。