壊れる少し手前の永遠

好きなバンドについて書いていこうと思います。

サニーデイ・サービス「MUGEN」

少し無理をしてでも、意識して未来に楽しみを作らなければいけない。強い決意のもと、ディスクユニオンのオンラインショップでレコードを1枚注文した。7250円。決して無駄遣いではない。むしろこの値段であの名盤を手元に置けるなんて、感謝しなければいけないと自分に言い聞かせている途中である。

一種の到達点である「サニーデイ・サービス」、溢れ出る混乱をそのまま提示した「24時」に続く、ラストから2番目のアルバム「MUGEN」。

イントロなしの「太陽と雨のメロディ」から始まるこのアルバムが1番好きだ。当時のバンドの状態の悪さとは裏腹に、生み出された優しい手触りの曲達は、時代とは無関係に重力から逃れるような軽やかさを携えている。

今年の頭、サニーデイを見るために初めて江ノ島に行った。行きの電車で繰り返しリピートした「空飛ぶサーカス」、そして「江ノ島」。薄曇りの車窓を眺めながら、昂る気持ちを抑えながら。

あれは本当に素晴らしい夜だった。あれが最初で最後の江ノ島になってしまうだろうか。

別段これまでが平和で幸せな世の中と思ったこともそれほどなかったが、きっとあの日々すら元の形には戻らないのだろう。確かなのは、この事態がある程度収束した後、音楽雑誌上で、二束三文のライターがコピペのように、コロナ禍が作品に与えた影響は、などと聞いて回ることだ。

いつまで今日の続きを過ごせるだろうか。

毎日、不安と怒りと何もできない恐怖に押しつぶされそうになる。会社には逃げられない沢山の人がいる。体調はすこぶる悪い。

 

音楽を聞かなければいけない。

救いではなく、現実逃避ではなく、今ここで立ち続けるために。

レコードの向こうで、曽我部さんは愛の歌を歌っている。今夜はそれが全てだ。