壊れる少し手前の永遠

好きなバンドについて書いていこうと思います。

豊田道倫「東京のSSW」

 いつか聴かないと、と思いながら早幾年。何処から手を出せば良いか迷いながら、結局そのままになっていた豊田さんの歌をようやく聴けた。

 ノイズの人というイメージだったので、この曲が入口として正しいのかは分からないが、一緒に生きていける曲にまた一つ出会うことができた。

 

 仕事終わりの平日6時過ぎ。急いで小さなライブハウスへ向かう。開演は7時くらいだろうか。そこから2時間程のライブ。どこか飲みに寄ることもなく、電車に乗り込んで外を眺めながら家路につく。時刻は10時過ぎ。

 ライブが始まるまでの高揚感。ライブ中、歌を触媒としてふと蘇る記憶。夜空を眺め、余韻に浸りながら歩く、まだ少し肌寒い夜の街。きっとカバンの中には、物販で買った新しいCDが入っている。その4時間の全てが、この5分の曲に詰め込まれている。

 東京の、と言うくらいなので、そう何回も自分の街に来ることはないミュージシャンなのだろう。自分の街という概念を失って久しいためはっきりとは分からないが、東京にそのミュージシャンを見に行くのとはまた違う、特別な感覚なのだろう。

 次会える時は、あの好きな曲を演ってくれるだろうか。

「ずっと好きな歌がある」

 数少ない、失いたくない確かな気持ち。

 

 これまで手を出しあぐねていた豊田さんのCDを買ったきっかけは、あまりにも素敵なトートバックを見かけたからだ。

 スタンダードブックストアという、大阪にある書店のサイトで販売されていた、「東京のSSW」の歌詞が全面に印字されたトートバッグとセットのCD「春のレコード」。歌詞を読み、即購入を決めた。

 この週末は、トートバッグを眺めながらCDを繰り返し聴いている。新品のトートバッグをおろして、ライブハウスに駆けて行く日を想いながら。

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