壊れる少し手前の永遠

好きなバンドについて書いていこうと思います。

9/26 日記 台風クラブのライブ配信

 何処にも行けないし、それ以上に何処にも行けない気分から抜け出せない1ヶ月だった。何もかもが煩わしく1週間ほどネット断ちをしてみたものの、その後意味もなくスマホに触れる時間がリバウンドのように増えた。

 ライブに行けなくなって分かったことは、私にとって配信ライブは何の代替にもならない、ということだった。元々ライブDVDも見ず、自分が行った時の映像が出ていれば買ってそのまま積みっぱなしだったことを考えれば不思議はない。

 開演まで1人待つドキドキ、客電が落ちた時の興奮、ライブハウスから出た瞬間の外の匂い。それらがなく、自分のタイミングで見れてしまう配信ライブに、私はきちんと向き合えなかった。洗濯物を畳んだり横になったりと、ながらでただ映像を眺めてそれで終わり。そしてライブに「似たようなもの」を見たことで生まれるモヤモヤ感。

 レコードを買うという趣味も、半ば強迫観念にかられた苦しいものに変わってきた。今を逃すともう買えないのではないか、十分値は張るがこれが最安値なのではないか。レコードに使っていい金額の上限は形骸化し、買っても増えていくばかりの積みレコード。ほっておくと音楽は大体サブスクで済ませてしまう。

 何をするでもなく休日を無為に終わらせてしまい、更に塞ぎ込んでいく日々。そんな中、先日YouTubeで配信された台風クラブのライブは、私をライブハウスのフロアに一瞬だけ戻してくれた。 

 元々昨年の3月に高円寺highで行われるはずだったこのライブ。もちろんチケットは予約していたが、振替日程が決まる度に増えていく東京のコロナ罹患者。遂に開催が決まった日程は2回目のワクチン接種日と重なり、行くことは叶わなかった(もちろん用事がなくても東京に行くことは心情的に憚られ、どのみちライブに行くことはできなかっただろうが)。今ごろみんな楽しんでいるのだろうな、などと思いながら副反応の高熱でダウンしていた。

 定点カメラによる映像、というのが私にとって良かったのかもしれない。配信だからこそ色々カメラを切り替えて、というのも分かるが、それは普段と違って色々な角度から見られることが利点であり、その普段が失われた今では煩わしさすら感じてしまう。揺れている人の頭の隙間から見えるステージ、というのが何よりも懐かしく、楽しい気分にさせてくれた。しかもひと席ずつ空けているため前の人と頭が被らず、とてもステージが見やすそうで羨ましい。

 ドラムの伊奈さんが、いつの間にかsyrup16g中畑さんのような金髪になっていた。私はかっこいいドラマーが大好きで、その上でちょっとトチるような瞬間がたまらなく愛おしい。「へきれき」でスティックを落としたり「野良よ!」のサビ頭で一瞬リズムがずれてしまう箇所は繰り返し見た。一歩間違えれば空中分解してしまいそうな「飛・び・た・い」のイントロはいつも最高だ。演者からすれば本意ではないだろうが、私はこんな瞬間、間違っても立ち止まらず無理やり進む姿にライブを感じるのだ。

 他人からもらっただけの熱はすぐ冷める。放っておけばまたすぐ憂鬱に飲み込まれてしまうが、何とかこれを機にぬかるみから這い上がる気力を取り戻せれば、と思う。