壊れる少し手前の永遠

好きなバンドについて書いていこうと思います。

Theピーズ 6/9武道館 30年前も30年先も(5)

デビュー曲だったり1stアルバムの曲だったり、活動初期の楽曲はそのバンドの代名詞として、その後リリースを重ねても残り続けます。
エレファントカシマシだったら「ファイティングマン」。
コレクターズなら「僕はコレクター」。
他にも私の好きなART-SCHOOLなら「Fade to black」、syrup16gなら「翌日」。
ライブの度に演奏され、ファンにとってもバンドにとっても大切な曲になることが多い気がします。

theピーズにとってのそれ、デビュー曲「バカになったのに」は武道館公演も佳境に入った23曲目に演奏されました。

「デビューの時って、俺たちが一番有名だったときだから今もこれ(バカになったのに)が代表曲みたいになってるんだよね」
清志郎さんにも「お、バカ(を歌ってるバンド)」と声をかけてもらったし」
「もう30年前、いつまでもバカになったのに、って甘えてちゃダメだ」
たしかこんなMCをしていた気がします。

theピーズの1stアルバムは、後の内省的な私小説のような歌詞の予兆はあるものの、大半の歌詞は意味のないもの。
THE BLUE HEARTS以降のロックとして、応援歌や薄いラブソングを量産するバンドに対してのカウンターとして機能していたはずですが、
それと同時にデビュー時に分類された「バカ・ロック」というイメージがその後もついて回ります。

分かりやすいイメージ、というのは一長一短。
バンドにもバカになったのにだけじゃないのに、という時期があったのかもしれません。
しかし武道館に集まったお客さんで、最近の曲は聞いてなくてもこれだけは覚えてる、という人もたくさんいたのではないでしょうか。

そして中期ピーズの代表曲にして大名曲「日が暮れても彼女と歩いてた」。
この2曲、ピーズの両輪ともいえる曲が続けて演奏されたのはとても大切だと思います。

気がふれても彼女と歩いていた、と歌詞カードにはない歌詞を歌うその姿は、なんとも言えない幸福感に包まれていました。
言葉の向こう側にある景色が客席一人一人の胸に広がっていく瞬間。
ロック史に残る、と大風呂敷を広げるまでもなく、この日武道館にいた人間の中で朽ちることなく、永遠に鳴り続ける音楽の一つでしょう。
共有したい、という気持ちと独り占めしたい、という気持ちは表裏一体ですが、この曲だけは武道館に集まった数千人で独り占めしてもいいのではないでしょうか。

未来へずれていく「サイナラ」、何があっても沈む「ドロ舟」、そして近年のアッパーチューン「真空管」。

そして最後の曲。アンコールがあるのは分かっているものの、夢の中でもうすぐ夢が覚めてしまう、と自覚できる時の気分というか、せつない気持ちが心をよぎります。

今日会えてよかった、と語るはるさん。
「生き延びてくれてありがとう、それだけだ!!」始まったの本編最後の曲は「生きのばし」。
復活後のアルバム1曲目を飾る曲。

この曲があったから生きられた瞬間、というのが何回もありました。

「あの日あの空拝めたのは あの日のボクらだけ」

生き延びてきたかいがあった。あの日何回も感じたことです。
去年初めて行ったフジロックでもそう感じましたが、もうしばらくはこんなライブに出会えないでしょう。
またいつか、そんな日が来るまで私は何回もこのライブのことを思い出すと思います。

本編が終わり、万雷の拍手の中袖にはけるメンバー。

ふと時計を見ると20時40分を回っていました。
この日MCで「今日9時までは武道館は俺の家だからゆっくりしてってよ」と言っていましたが、9時なんてすぐです。
あれ、まだ聞きたい曲、聞いてない曲たくさんあるのに、とにわかに焦り始めた私でした。

たぶん次で終わります。