壊れる少し手前の永遠

好きなバンドについて書いていこうと思います。

syrup16g 3/20 新木場STUDIO COAST「冥途」思い出し感想(last)

本編ラストは1stから「Drawn the night」、そして1st mini album『free throw』から「翌日」で締め。
「ロックの未来はsyrupにあり! 世紀末、静かに放たれる彼らの[フリースロウ]」
帯にそう銘打たれた、現在の若いバンドの水準からは考えられない音質レベルではありますが、間違いなく名盤である『free throw』。
syrupの全てが詰まっているアルバムであり、表現がどんなに鬱屈した方向に向かってもやはりsyrupの本質はこのアルバムの1曲目「翌日」だと思っています。

syrupは(セールス的には)世界を変えられなかったし、ロックの未来を託されるには荷が重かったかもしれませんが、日が経つにつれ美化される記憶の中で「伝説」として終わるのではなく、全てをさらけ出しながら現役のロックバンドとしてこの日まで生きながらえてきました。
それが最も素晴らしいことであり、それが全てだと感じさせられるライブでした。

「翌日」のあたりになると、最初はボロボロだった声も少し戻ったというか、気にならなかったというか。
中畑さんのコーラスがいつも以上にきれいに響いていた気がします。
この日が終わりではなく、また今日の続きの日が訪れることを確信させてくれるラストでした。


ここまでで14曲、もちろんこれでは帰れません。
すぐに早くなり、波のように何度も消えながらも鳴りやまない手拍子の中ステージに戻ってくるメンバー。


なんとメンバー全員同じ「十六夜」のTシャツ着用での登場。
ここがこの日何回目かの個人的ハイライト。
普段であれば五十嵐さんと中畑さんが最もダサいTシャツ、キタダさんがその次にダサいTシャツを着用と役割分担(?)が決まっていましたが、この日はついにキタダさんがダークサイドへ。
患者Tの時もキタダさんは「医者」だったり、やはりどこかでバンドを俯瞰できる一歩引いた場所にいた印象のマキリンでしたが、最後の最後で、音的にも服装的にもひとつのバンドに。
『copy』から16年、紆余曲折を経てsyrup16gがバンドであることを取り戻したことを感じさせるシーンでした。

このあたりからは客席も盛り上がることに一切の遠慮がなくなっていました。
かつては手を挙げる人はごく少数で、後ろから見てると大海原で救助を求めている人状態で、その人も周りの空気を察し次のサビでは手を挙げない、というような光景が常だった気がしましたが、この日は最前列は完全にモッシュピットとして機能していました。

「無効の日」から始まって、「生活」「神のカルマ」「share the light」「天才」そして「真空」。
盛り上がるな、という方が難しい激しい曲で固められたアンコールは本当に一瞬で終わりました。

やはりこれでは帰れない。
祈るように手拍子を続けました。


ダブルアンコールでは五十嵐さんだけ「冥途」シャツを着用。
確かに、中畑さんもキタダさんもすぐ別の現場があって、休むのは五十嵐さんだけだもんな、と妙に納得。
また記憶があやふやですが、「頑張れ」と何人にも呼び掛けられる中で、「良かったよ」だったか「お疲れ様」だったかの声に瞬間で反応する五十嵐さんに笑いました。めっちゃ聞こえてるんだな、と。

最後は「reborn」でした。
「またいつか戻ってきます。また会いに来てください。おやすみなさい」というMCで始まったイントロ。
バンドの節目節目に演奏される、とても大きな意味を持つ曲となった「reborn」を五十嵐さんは丁寧に歌い上げていました。

ライブ後に発売された音楽と人のインタビューで、五十嵐さんが自ら書いた「reborn」の歌詞に救われている、という発言を読んで、私的にはこのライブがようやくひと段落しました。
五十嵐さんが「reborn」に(というかこの曲が代表曲として扱われることに)あまり良い印象を持っていなかった気がしていたのですが、ファンにとってはもちろん、五十嵐さんにとっても大切な曲になっていたこの曲に思いを込めてステージを後にしたsyrup16g
寂しくないといえばウソになりますが、また会える日を楽しみに待つ日々も悪くはありません。


最近は天気もいいので、五十嵐さんには部屋に引きこもらず散歩にでも出て気分転換しつつ休息の日々を過ごしていてもらいたいです。
そしてまた生きている間に(五十嵐さんはもちろんこちらも)戻ってきていただきたい。
亡くなられてた青木さんのこともありますが、生まれ変われるのは生きていられる間だけです。
まあ特に連休もなく世間で言うGWを社畜として過ごした私が言えることではありませんが...


2か月近く前のライブの感想をようやく書き終えることが出来ました。
あれ以降、かなりのペースでライブに行きました。
同じく新木場できのこ帝国、松本でART-SCHOOL、下北沢で台風クラブ/サニーデイサービスの対バン、その夜に同じく下北沢でthe MADRAS(チューインガムウィークエンドの橋本さんが始めたバンドです)、そして豊洲でフェニックス。

お金が貯まるわけがない生活ですが、大学院の地獄の日々を考えると何とも幸せな日々を送ることが出来ています。
昨日より今日が素晴らしい、とまあ言い切れなくもない人生に感謝しつつ、明日から仕事です。

フジロックのためにいっぱい働いていっぱい稼いで、苗場で浴びるほどビールを飲めるよう頑張ります。