壊れる少し手前の永遠

好きなバンドについて書いていこうと思います。

Theピーズ 6/9武道館 30年前も30年先も(last)

アンコール終了後、客電はまだ点きません。
タブルアンコールを求める手拍子が始まったのもつかの間、今度はほんの30秒くらいでメンバーがステージに戻ってきました。
最高に嬉しかったですが、はける必要あったのか?と思ってしまうくらい早い帰還でした。

このあたりのMCはもう記憶にありません。
時間が経ったから、というわけではなく興奮しすぎてたからで、あの日の段階でもう記憶があやふやでした。

そんな中で始まったのは「何様ランド」。
短い夏が終わるのを覚悟した、7日目の蝉のようなありったけの声が響くステージと客席。

勝手な世界で夢を見る、と叫びながらも現実の浸食を止められず一度は止まってしまったバンド。
ただそんな夢、すでに夢と呼べるかも分からないくらい色や形は変わってしまった、でも今更捨てることもできないような荷物を心の中に抱えたまま、それでも日々を過ごし、また転がり始めた人間を目いっぱい詰めたあの日の武道館。

ただこの日のライブで一番素晴らしかった点はそんな感傷や傷を舐めあうではなく、また過去に願い叶わなかった、通り過ぎたはずの未来であった武道館という会場に圧倒されることもなく、ただ3人の中年が幸せにあふれたロックンロールをステージで演奏し、それをただただ心から楽しむことができたことだと思います。

色々あったけどよかったね、とかこれからバンドはどう活動するんだろう、とか、ライブが始まる前に考えていたあれこれはこの時点で一切頭の中から消えていました。
過去や未来ではなく、今ここにあるものが全て。
言葉では聞いたことがありましたが、このことを実感したのはあの日が初めてでした。
いま世界で一番魔法に近い音楽が鳴っているいるのはここだ、と本気で思えました。

世界を変えたり、争いをなくしたりはできない、持続力はもって2時間ちょっと。
ただその2時間の間だけは何をも凌駕する魔法、ロックンロール。

そして魔法は終わりを迎えます。
「それじゃまたどこかで!!」と叫ぶはるさん。
満員の観客、そしてバンドをを白日にさらすように客電がつく武道館。
誇張ではなく何百回も聞いた、Dのコードで始まるギター。

35曲目、そして最後の曲「グライダー」。

灯りがついて、いろんな人の表情がよく見えました。
ステージ上のはるさん、アビさん、しんちゃんの顔。
袖で見守るスタッフさんたちの顔。
左隣で号泣し、右隣でこれでもかと腕を上げるお客さんの顔。

「30年前も30年先も 同じような空を行くよ」

きっと空の色はあのころとは違うし、これからも変わり続けていくだろうけど、それでもそこに空があるのは同じ。
空がある限り、飛べるというよりも飛んでいかざるをえないのでしょう。
風に乗っかって重力を越していく。
もう降りる場所はどこでもいい、ギリギリのまま行ける所まで行くし、その時はまたきっと誰かに会える。


3時間弱のtheピーズ武道館、大団円を迎えました。


フラカンはステージ中央で4人で手を挙げ、観客の大声援に答えました。
コレクターズは「恋のヒートウェーブ」を終え、さっとステージを去りました。

それぞれのバンドの美学。
theピーズはどうステージを去るのか。

答えは、いつまでもうだうだステージ上をウロウロする、でした。
時間押してるんじゃなかったのか。

グライダーを終え、楽器から手を放す3人。ステージ最前に集まります。
皆で手をつなぐフラカンパターンかと思ったのもつかの間、3人はそのまま輪を作りぐるぐるとその場で回り始めました。

武道館ではしゃいで回る3人の中年。
その姿に大爆笑で歓声を送る9000人の観客。
最高の光景でした。

終演後ツイッターに上がっていた、幸せそうな顔で輪を作る3人の写真は平和の象徴、天使そのもの。
翼なんてとっくに折れているであろう50過ぎの3人のエンジェル。
ピューリッツァー賞受賞も可能だと思いました。

その後本当にステージから降りたくないのか、ウロウロし始めるはるさんアビさん、それを後ろで見守るしんちゃん。
そして武道館がその姿を見かねたかのように、蛍の光よろしく流れ始めたのは「好きなコはできた」。

しかしステージから3人はおりません。
お客さんが歌うのはともかく、アビさんも1番くらいはステージで歌ってました。
時間全然余裕じゃないか、それならもう1曲「yeah」くらい余裕でできたじゃないか...と思いながら、いつまでも続くような幸せな光景を眺めていました。

ようやくメンバーがいなくなった後も、観客による合唱は止まりません。
しかし結構長いんです、この曲(とどめをハデにくれに入ってる曲はだいたい長い)。
会場から出たくない、というよりも長い曲で出るタイミングを失い、半ばやけくそで最後まで踊ってやる、という空気を少しだけ感じたのは私だけでしょうか。
私はトイレを我慢しながら歌ってました。


それにしても幸せな時間でした。欲を言えば「yeah」を聞きたかったですが、100点満点のライブだったと思います。
いづれ出るであろうDVDを楽しみにしながら、これからもがんばって生きのばしていく所存です。

感想書くのに丸1ひと月かかってしまいました。
ピーズの武道館が決まってから始めたこのブログ。
これからもちょくちょくライブのこととか書いていこうと思います。

まずはフジロック!!
楽しみです。
どうしてAPHEX TWINくるりが丸被りなんだ...