壊れる少し手前の永遠

好きなバンドについて書いていこうと思います。

台風クラブ(とその周辺)の思い出(2)

流石にボブディランを見ない、という選択はできなかったため、フジロック前にもう一度台風クラブのライブに行くという結論で落ち着いた。

6月頃だったか、新潟でどついたるねんとの対バンがある事が分かった。開演時間が遅めで、最後までいると終電に間に合いそうもなかったため、台風クラブのステージだけ見て帰ることに。開演までゴールデンピッグ近くのパブ的なお店で飲んでいた。いつも通り1人カウンターで所在なく、お店の人が話しかけてくれたことがやけに嬉しかったのを覚えている。

ライブハウスに着いた時、お客さんはステージ前2列のみ、10数人くらいしかいなかった。後方の物販には台風クラブが3人が店番。誰も見向きもしていなかったため、最初はそっくりなスタッフの方がいるのかとすら思った。CDを買いサインを貰う。石塚さんの手の込んだサインに驚く。「フジロック、やっぱりボブディランの裏ですか?」「そやなー」といった会話をしたように思う。サイン後、CDのシュリンクを山本さんが上手に戻してくれた。この時も曲と曲名が一致しないレベルだっだが、「2013年のピンボール」を聴いた覚えがある。「台風銀座」のワンツーの所で、なんだか気恥ずかしくて上手く腕を挙げられなかった。投げやり、逃避、開き直り、そこから滲み出る隠しきれないポップさ。3人編成の佇まいも愛するtheピーズを彷彿とさせる。このライブで、台風クラブをすっかり好きになっていた。

その後、ボブディランのステージはトリでないことが判明。これで後顧の憂いなく台風クラブを見ることが出来る。2018年のフジロックは更にもう1人同期を誘い3人で行けることに。1人の2016年は車中泊、2人の2017年はテント。今回は奮発して宿を取ったが、通された3人部屋は良く見積もって物置、普通に見れば扇風機が置いてある独房だった。それでもテンションが下がることなく皆で爆笑できたのはフジロックの魔法か。思えば私の青春は10代ではなくこの頃だった(同時に仕事のストレスにより精神状態は悪化の一途を辿ってはいたが)。

この年は朝イチで見たグリーンのeastern youth、夕暮れが美しいホワイトでのエレファントカシマシ、最後の最後で見たT字路sが印象に残っている。またボブディランのステージは忘れられない。アレンジを原曲から変えまくっていると聞いたため、直近のセットリストを確認しかなり予習をした。終演後の自信に満ち、ふてぶてしさすら感じる立ち姿のボブディランに感動した。とっくに伝説の存在が、カッコつけながら転がり続ける偉大さと可笑しさこ一端に触れた。余韻覚めやらぬまま、すぐに苗場食堂に移動。前年まではあまり見なかった椅子の場所取りが多く、少しもやっとした。

この時が、2023年現在まで私が見た台風クラブのライブの中で1番盛り上がっていた。苗場食堂のステージに柵などなく、最前で見ていたが危険を感じる程のモッシュの圧を受けたが本当に楽しかった。コロナ前、皆が飛び跳ねる中でなんの気兼ねもなくワンツーと叫ぶことができた。すごかったですねー、と隣にいた女性と少し話す。思えばあの方は岡村詩野さんだった気もするが、今となっては分からない。終演後誰かがTwitterに上げた写真に、満面の笑みを浮かべ腕を挙げる私の姿があった。