壊れる少し手前の永遠

好きなバンドについて書いていこうと思います。

the chewinggum weekend そして the MADRAS 鳴り止まない音楽たちへ(last)

 橋本さんにサインを貰うまでの思い出と自分語り、今回で最後。

 

 ライブ終演後、まずは物販でthe MADRASのCDを買うべく列に並ぶことに。自分の番が来て驚いたのは、ドラムの安蒜リコさんが物販を行なっていたこと(私はこの時初めて、バンドメンバーが物販を行うスタイルを見ました)。

 ステージで見た時もイケメンだな、と思っていましたが、間近で見ると更にイケメン。そのイケメンさに焦り、挙動不審になりながら「daydreamer」を購入しました。今思い出しても悲しい。

 この時点で喉はカラカラ。こんなことで橋本さんに話しかけるなんて可能なのか、と落ち込みながら、この日何杯目かのビールを購入することに。

 

 向かったバーカウンターで、私の前に並んでいたのが橋本さんでした。緊張を通り越し、一周回って穏やかなビートを刻み始める心臓。

 ここでビビって帰ろうものなら一生後悔する、逃げてはいけない。

 カバンからサインペンと「killing pop」を取り出し、息を潜めながら橋本さんの死角に立つ私。

 このビールを飲み干したら行くぞ、と決めたはいいものの、一瞬でカップは空に。やっぱり緊張してました。もう時間を引き伸ばす言い訳は残っていません。

 今だ、今しかない、行け、行け、と自分に言い聞かせながら、一歩ずつ近づく姿は、どう考えても不審者だったでしょう。

 遂に、橋本さんの前。ここで話しかけなかったらそれこそ不審者、という位置まで行き、遂に覚悟(観念に近いかも)を決め、声を絞り出しました。

 

「ずっとチューインガムのファンでした、CDにサインを頂けませんでしょうか」

 

 本当は記憶を美化し、色々橋本さんと話ができたことにしたいのですが、この日声になったのはこの一言のみ。あとはあ、とか、う、とかいう音がただ口から漏れるだけ。完全に勇気と気力をここで使い果たしました。

 そんな状態の私でしたが、橋本さんは優しい笑顔で「聞いてくれてたんだ、ありがとう」と言いながら、差し出したペンとCDを受け取ってくれました。

 

 ライブを出た時の、夜風の心地よさと足取りの軽さは、これまでに経験したことがないほど素晴らしいものでした。生きていてよかった。

 

 心残り、と言うかしまった、と感じたのは、橋本さんに書いてもらったサインが「チューインガムウィークエンド ハシ」であったこと。the MADRASというバンドをやっていて、そのライブ直後に、過去のバンド名を書かせてしまった。本来であれば、買ったばかりのthe MADRASのCDを渡すべきでした。

今となっては後の祭りですが…。

 

 あの日は、そういったことに考えが及ぶこともなく、ただ思い焦がれた人にようやく会えた喜びに包まれ、フワフワしながら帰りの電車に乗り込んだことを覚えています。何度も何度もCDを眺めながら。 

 

 あれから、時間が許す限り、the MADRASのライブには足を運びましたが、今はそれも叶わず。今年の頭、1月の高円寺が、今の所最後に見に行けたライブです。

 東京に行くことすら憚られる中、ライブハウスへのハードルは心情的に高くなっており、もうライブに行くことはできない、と悲観的な覚悟をしている部分もありますが、そう簡単に諦める事も難しく。

 いつかまた、という奇跡を願いながら、今日もCDを聴いています。

 

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