壊れる少し手前の永遠

好きなバンドについて書いていこうと思います。

「春の風」(どついたるねんRemix)が最高にいい

 サニーデイのリミックスアルバム「もっといいね!」が配信されてから、どついたるねんの「春の風」ばかり聴いてしまっている。

 共通項は曲名のみ、くらいの完全なる替え歌に、心を掴まれてしかたない。

 特に2番の歌詞は、オリジナルを思い出せなくなりつつある。替え歌バージョンを聴くたびに、原曲の空を眺める青年から、夜の墓場で運動会を繰り広げるヤバい人にイメージが上塗りされて行くのがはっきりと分かる。

 原曲の持っていた空気を完全に無視し、ただメロディに乗っただけの(メロディすら外れたり)どうしようもない言葉の羅列。しかしそれは、江ノ島オッパーラで初めて原曲を聴いた時に感じた、体の奥底から湧き出る感動と喜びを呼び覚ましてくれる。

 

 新たに作られたPVもたまらない。

 方やサニーデイの演奏をスマホで見て、抑えきれない衝動に突き動かされ走り出す青年。方やカレーを作るYouTuberを見ながら満面の笑みで走る赤い服を着たヤバそうな人。一体何に突き動かされているのか。

 ヨタヨタと走り出す瞬間が最高だし、スマホを持った手の方に重心がずれた状態で走る姿に意味もなくグッとくる。

 前者は人気のなさそうな、どことなく絵になる場所を走っているのに対して、後者は車や電車や店の灯りが映り込む、明らかに人の居住空間を全力疾走していることで、より不審者感が際立つ。

 ただ、2つのPVを見比べながら、根底は同じなのだな、と感じ始めた。理由が何であろうが、夜道を全力疾走する人は他人から見れば不審者だし、また走り出してしまうような感動、エネルギーを生み出すもの(ここではサニーデイとカレー動画)に優劣はない。

 繰り返すうちに、どんどんこのバージョンが好きになる。サビにエリッククラプトンがねじ込まれるなんて想像すらしていなかったし、曲終わりのでっかい車にぶつかったと思われる音で少し冷静になる。突発的な自殺衝動はどこか魅力を感じてしまう節があるが、迷惑さで考えれば、お墓でお供物を盗むやつの方がいくらかましだよな、とか。

 

 この1年は、サニーデイ曽我部恵一ソロを聴きあさり、数ヶ月先の小遣いを前借りしながらレコード集めに終始する日々だった(サニーデイは「若者たち」、ソロは「sings」、曽我部恵一bandは「トーキョーコーリング」を残すのみで、LPはコンプリートに近づきつつある)。

 来年には「もっといいね!」とソロ新譜のレコードを買うのだろう。全ての音源をきちんと咀嚼し、消化できているとは言い難いが、先の予定があるのは数少ない希望である。予算と埋まり切ったレコード棚をなだめすかし、新たなレコードをお迎えする喜びをこれからも味わえたらな、と思う。

 

 今日の夕食は、PVに影響を受け、キノコ入りのカレーを作ることにする。走り出したくなるくらい美味しそうなやつを。