壊れる少し手前の永遠

好きなバンドについて書いていこうと思います。

チューインガムウィークエンド 7/18 西早稲田BLAH BLAH BLAH

今日行われるthe MADRASのレコ発ライブに向かう電車の中で、書きかけのメモを清書している。

今年はライブ自体数える程しか行けていないし、コロナ前に比べて明らかにライブを楽しめない自分がいる。周りの客の挙動が過剰に気になり音楽が入ってこない。もうフェスなんて二度と行けないだろうし、配信もあまり好きではない。これからは、よほど好きなバンドのライブ以外は行かなくなるだろう。所有レコードの総数も先日遂に妻に露見し(多いな、とは薄々気づいていたが、考えないようにしていたそうだ)、無節操に音源を買い漁るのも難しくなった。生活は続くが、少しずつ確実に形を変えていく。

それでも、あの日は特別だった。橋本さんと鈴木さん、初期のドラムであるクハラさんが集まった「準」チューインガムウィークエンド編成のライブ。それでもそれは、高校生の自分が心から望んだ瞬間だった。

 

もうこのライブがら3ヶ月も経ったことに驚いている。現在は少し麻痺してしまった部分があるが、この日はコロナに怯えながら意を決して東京に行った覚えがある。店は満員だったが着席制、皆期待に満ちているが必要以上に騒ぐ人もおらず少し安心した。この日は鈴木さんの生誕祭。氏のファンも多く、皆がこの場を大切にしていることが感じられた。

 

第一部の最後、橋本さんがステージに上がり「ハニーチェイン」「キャロライン」を演奏。浮き足立っていたため、あまりこの2曲のことを覚えていない。遂に始まった、そして終わってしまう、とあの日のメモには記されていた。

 

第二部が始まり、ステージには鈴木さん、クハラさん、ギターのビートモーターズ秋葉さん。橋本さんは着替えに手間取って、と遅れて現れたが、服は先と同じだった。

 

一曲目、イントロのコーラスで鳥肌が立った。「青い雨が僕らにもふりそそぐ」、まさかこの曲が聴けるとは思っていなかった。

1stの良さが分かって来たのはこの数年で、激しいギターサウンドを期待していた高校生の私には少々肩透かしなアルバムだった。昔からのファンとは違い、この曲を聴いた瞬間に戻れる思い出に満ちた「あの頃」は私にはない。それでも一瞬、自分がどこにいるのか分からない、知らない場所で浮遊している感覚があった。

1stの曲はライブで2nd以降の曲と並んだ時浮いたりしないのか、どのようなアレンジで演奏されていたのだろうと思ったものだが、その疑問は氷解した。4人の音で全く過不足ない、しっかりとした強度を持った曲だ。1stのアレンジに不満は全くない。バンドの演奏を邪魔せず、寄り添い彩るオーケストラは素晴らしい。それでもアルバムに収められたこの曲は、当時のバンドの姿をそのままパッケージしたものではなかったのかもしれないと感じた。

2曲目は同じく1stから「キス」。それにしても橋本さんの歌声はアルバムと変わらない。20何年前に生み出され、長らく歌われていなかったはずの曲が、そのロマンチックさを損なわず目の前にあるのが信じられなかった。それは音程を外さぬよう、ただなぞっただけでは生まれ得ぬ感覚のように思う。青年期の青さや憂いが、橋本さんの中にそのまま残っているのだろう。そしてコーラスがとてもいい。本当にいい曲だ。

一転、「ミラーボール」「グロリア」とバンド後期の曲が演奏された。先までステージに流れていた優しいギターとコーラスは、歪みと過剰なほど分かりやすいサビのメロディに変貌した。歌詞も優しく淡い物語を紡ぐような俯瞰のカメラがグッと寄り、一人称の焦燥を強く印象付ける。それはその後バンドがどうなるか知っているが故の思い込みだろうか。

1stと2ndの架け橋になるような「きらきら」は秋葉さんのギターソロがとてもよかった。曲終わりの拍手が長く、なかなか鳴り止まなかった。

「アイス」で橋本さんの声の温度が一段下がる。1stから路線変更と言えるこのシングルが出た時、当時のファンはどのように受け止めたのだろうとふと思ったが、隣に座っていた方がイントロが始まった瞬間とても喜んでいたのが印象的だった。

本編最後は「キリングポップ」。

チューインガムとの出会いの曲、感無量になるかなと思っていたが、意外とフラットに聴くことができた(もちろんもの凄く嬉しかった)。それはきっと、橋本さんが現在マドラスで活動しているからだ。もちろんチューインガムの曲が聴けるのは嬉しいし、悲願であったことは間違いない。チューインガム以上にマドラスが好きになれた、ということだろう。現在進行形でいい曲を演奏するバンドが見られる以上、思い出に固執する必要もない。これからもこういった機会があればもちろん嬉しいが、過去の自分に一区切りつけることができたライブだった。アンコール「ノスタルジア」を聴きながら、そんなことを考えていたように思う。

 

ここまで書いて電車を降りたが、被ってきたはずの帽子を無くしたことに気づき落ち込んでいる。JRに問い合わせてみてはいるが、見つかるだろうか…

ディスクユニオンで持っていたかどうか記憶が半々の、スカート「月光密造の夜」を見つけ購入。ダブっていないことを祈る。ライブまでホテルでぐったり、なんとか気分を持ち直したい。