壊れる少し手前の永遠

好きなバンドについて書いていこうと思います。

2023 8/25 日記

 休職4日目、6時20分起床。午前4時頃に早朝覚醒、ベットでじっとしているとこの時間になっていた。猛烈なダルさはあるが、両足はなんとか動きそうだったので炊飯器をセットしてから散歩に出る。時折サッと雨が降るような空模様だったが、散歩はうつに効くはずという強迫観念に押され何とかドアを開けた。
 これから出勤するであろう車の進路方向とは逆に歩いて行くうちに気分はどんよりしてくる。橋から見下ろす川面は嫌いではないが、頭から行けば確実だろうな、という思考に支配されがちなためなるべく見ないよう、歩くことに集中する。橋を降り、川沿いを歩いているうちに雲間から陽が差し込み、一瞬ではあるが気分が良くなる。
 約40分の散歩を終え帰宅、シャワーを浴びる。流石に汗を流した後のシャワーは快適だが、蛇口を止めた瞬間、身体が重力を思い出したかのように重くなる。妻が起きるまでソファーに沈む。何故かふるさと納税のことを考えていたが、休職に伴いボーナスも減額されることを思い出したため急ぎ思考を打ち切る。
 8時30分過ぎ、妻と朝食。食欲はないため卵かけご飯をかき込む。妻の出社を見届けてから私も準備。週に1回、副作用だけは一人前に出る抗うつ剤を貰うための心療内科通い。

 9時25分頃出発。35分頃、坂道を下り信号待ちをするためスピードを落とすと突然のエンスト。後続車はなく、急ぎハザードを出し路肩に止める。エンジンをかけ直すとあっさり動いたため、何とか安全な場所に移動しようと車を動かす。40分頃、二車線道路を走行中再びエンスト。何故もっと早くどこかで停まらなかったのかとは思うが、慣れない道でさっとコンビニを探すことは私には出来なかった。ここでも赤信号を確認し減速中に起きた。何とか中央分離帯に車を寄せる。追突事故を誘発しなくて良かったと思うほかない。
 JAFを呼ぶが1時間程かかるとのこと。先に警察に連絡するよう指示があり、歩道に出てから電話をかけ直す。110番はパン屋の駐車場で停車中の隣の車のサイドミラーを擦ってしまった時以来だ。居場所を伝えるために近くの眼鏡屋の名前を伝えるが、信号の名前を聞かれ狼狽える。そして今日初めて信号にぶら下がった案内板に書かれている名前が信号の名称であることを認識した。

 心療内科に予約を午後に変更してもらう電話をしているうちにパトカーが到着した。最近アプリでハコヅメという警察の漫画を読んでいるため、くだらない事で連絡して仕事を増やし申し訳なくなる。交通整理をしてもらっている間に、もう1人の方に近くのコンビニの駐車場まで車を押してもらうことになる。この時は普通にエンジンがかかり、車への殺意と警察の方への申し訳なさが加速する。
 駐車場で警察官に平謝りする。側から見れば捕まっているようにしか見えなかっただろう。口が渇ききっていたためコンビニでポカリを購入。レジで串揚げを勧められたが喉を通るはずもなく苦笑いで断る。

 JAFを待ちながら駐車場で我が愛車を眺め、空を見上げる。空は青く雲は白い。時折私を慰めるように風が頬から身体へ抜けていき、灰皿の風下にいたため湿った吸殻の匂いに包まれる。34才の夏休み、神聖かまってちゃんも歌ってくれない年齢になったな、とふと思う。駐車場に車は1台、私だけ。トンボが2羽、クルクル回っている。真夏のピークは去ったことを感じた。
 健康そうな少年が自転車でコンビニへやって来た。生気なく壁にもたれる、不審者そのものである私を避けながら店内に入っていく。しばらくしてニコニコ顔の少年が、紙に包まれた串揚げであろうものを持って出てきた。今度は私も彼の視界に入らないように場所を変える。串揚げを自転車カゴに入れ、彼は夏休みの中に立ち漕ぎで戻っていった。私が彼の年齢の頃、こんな未来を想像しただろうかと思ったが、昔から悲観的だったためなるようになった現在なのかもしれない。

 10時50分頃、JAFのレッカー車が到着。整備の方の前では当たり前のようにエンジンがかかる。エンジンが止まる所を見たいので車道に出てくれないかと言われるも固辞、いつも行く車両整備の店までレッカーしてもらった。
 11時20分頃、整備場到着。ペットボトルのお茶をいただき、人の優しさに触れる。普段車に乗らないわりに(乗らないせいかもしれないが)不思議な故障に見舞われるため、今回もし修理代が嵩むようであれば廃車、乗り換えも検討してもいいかもね、と奥様とお話しする。とにかく運転が苦手で、人の車で事故を起こすプレッシャーに耐えられないためいつも代車は借りられない。午後の病院へはタクシーで行くよりない。

 このまま帰宅するとうつと情けなさで動けなくなるのは明白だったため、散歩がてら遠回りし昼食をとることにした。早朝とは違い太陽は昇りきり汗は滴り落ちるが、キラキラ光る川面は綺麗だった。20分程歩き、気になっていた蕎麦屋に入る。冷房がかかった空間で腰を落ち着けるやいなや、汗が滝のように流れ出した。これは滝のようと形容するに相応しいなと思いながら、みるみる湿っていくシャツを眺める。自分の匂いが気になり、人のいないテーブル席に移動させてもらう。
 蕎麦はあまり口に合わなかったがミニカツ丼は美味しかった。何より最後にアイスコーヒーが出たのがとても嬉しかった。店からすれば普段から行っているサービスなのだろうが、疲れ切った心にはアイスコーヒーが声援のように感じられた。この時、午後の通院をタクシーではなく電車で行くことに決めた。私はどこかに電話することに異常に苦手意識があり、またタクシーに乗るのがかなり苦痛になる(理由はよく分からない)。電車だと一度市内に出て乗り換えするため、車で行けばいくらかかっても30分のところ90分かかってしまうが、気持ちは随分軽くなる。私は今日から藤井聡太先生のような乗り鉄になる、乗りたいから乗るのだと自己暗示をかけながら、急ぎ帰宅し本日2回目のシャワーを浴びた。そして今日のことを日記につけておこうと決めた。

 朝履いて出たジーンズは汗を吸えるだけ吸っていたため別のズボンを探す。昔は服など全く気にしなかったが、結婚後に教育的指導を受け続けた今、服装がおかしくないか妻に確認しないと服ひとつ選べなくなった。涼しそうな短パンを履きたかったがこれが正しいのか分からず、やむなく別のよそ行き用のジーンズを履いた。
 また汗だくになりながら時刻ギリギリに最寄駅に辿り着く。周りは若者ばかりで、自分が不審者でないと証明できるのは左手の結婚指輪だけであるような気になってくる。周りはまだかなりの割合でマスクをしているため、私もそれに倣った。駅に着き、初めての路線に乗り換える。券売機で切符を買い、駅員さんに切ってもらう。イノシシのヒズメのような跡が切符に付く。たまにこの路線でラッピングされた車両が走っている見かけるが、ホームに停まっているのは通常のもののようだ。今日から乗り鉄なので、車体の番号など確認してみる。クモハ705と書いてあった。座席は深く沈む。走り始めると直射日光が当たる場所であることが分かり閉口した。
 30分程で目的地に到着。数駅前に降りる方が車掌さんに切符を渡していたのを見たのでそれに倣ったが、駅で渡して下さいと言われ恥ずかしかった。先の停車駅はどうやら無人駅だったようだ。徒歩数分で病院へ到着。診療開始時間まではまだ時間があり、近所のドラッグストアへ。グミを買おうとしたが、突如レジに持っていくのが怖くなり断念。情けなくなる。15時の10分前に病院が空き、待合室で一息つく。
 最初に診療室に通され、この1週間の症状を先生に話す。薬の比率を変えて様子を見ようと言われたので、様子を見ることにしようと思う。高速診療の甲斐あって、1時間に1本の帰りの電車に乗ることができた。帰りの切符には、行きとは違い四角い跡の切れ目が入れられた。

 家に帰っても辛くなるだけなので、喫茶店に寄ろうと決めた。どんな時でも喫茶店にいる時は心が安らぐ。電車から降り、影を伝って街を歩く。ガラス張りの店には気後れして入れず、Googleマップに出てこない気になっていたお店は閉まっていた。たまに店の前を通りかかっていたお店に入る。マスターとお客さんが1人、楽しそうに話していたが、異物が空間に混ざったことを察知し会話が止まった。身を縮めながら空けてもらった席に座りブレンドを注文する。私は山川直人さんの「コーヒーもう一杯」に強く影響を受けており、初めてのお店では必ずブレンドを頼む。と言うよりも今だにどの豆がどういう味か分かっておらず、メニューに深煎りの説明書きがない場合ブレンドを頼む他術がない。私は苦味の強いコーヒーが好きだが、このお店のブレンドは酸味が強くフルーティーだった。ちなみに私はコーヒーの味を説明する語句をこの3つしか持ち合わせていない。壁に豆の種類や特徴が書いてあったが、せっかく日記をつけるのにもう何を書いていたか覚えていない、残念だ。元々長居できないタチだが、あまりに所在なく早々に店を出た。

 このままでは帰れないが、目的なく歩くのはかなり精神状態がいい時にしかできない。以前行ったことのある本屋に向かい、その時は現金の手持ちがなく断念した「死ぬまで生きる日記」という本を買った。いつか読むべき本だと思っていたが、そのいつかを今日にすることに決めた。その本を小脇に、向かいの民宿のような喫茶店のような居酒屋のような、昭和の住居をそのまま残したお店に入る。前回は立ち飲み席だったが、今回はカウンターに上がらせてもらう。コーヒーとカタラーナというデザートを注文。これは忘れたくなかったのでしっかりメモをしておいた。
 扇風機の風が優しく、とても居心地がいい。厨房が丸見えの席から、下戸な私がこれからずっと飲むことがないであろう色とりどりの酒瓶が並んでいるのを眺めていた。近所の常連さんが集まり始め、楽しい空気が充満する。皆笑顔だ。私は元々この店に置いてあったカップのように、自然にその空間にいることができた。コーヒーも美味しくおかわりし、本をめくっているといつの間にか時間が過ぎていた。また来たいと思う。次回は品切れだったチーズケーキを頼みたい。

 妻に連絡し、駅まで来てもらうようお願いした。朝日を浴びるためいつも散歩は早朝だったが、夜の散歩も心地よい。ふと祭り囃子が聞こえた。足を止め角を覗くとお神輿の明かりも見える。周りの皆のように楽しめないため祭りに参加するのは苦手だが、どこかで祭りが開かれているのはなんだか嬉しい。明日は花火大会があるようだ。街中に吊るされた提灯を眺めながら待ち合わせ場所まで歩いた。
 夕食はラーメン屋に行くことになった。美味しいがあまりに味が濃く量も多いため、以前食べた時は1週間胃が荒れてどうしようもなかった。今日は妻が大盛りを頼み、それを少し分けてもらうことで対策をとった。別にキクラゲのたまご炒めも注文。大学院生の頃、これも異常に大盛りの店で唯一完食できた思い出深いメニューだ。店内にはYOASOBIの「アイドル」が流れている。小鉢に分けられたラーメンで私の胃袋は十全に満たされた。たまご炒めも味が濃く、小ライスを更に少なくしたものを注文した。注文したと書くと嘘があり、注文もライスの量の交渉も妻にしてもらった。ひとりでは何もできない子供のような状態だ。それでも何とか今日を終えることができた。スマホに記録された歩数を見ると17714歩とのことだった。良く歩いたと、わずかな達成感を得られた。これでグッスリ眠れるといいのだが。

 8/26 4時30分。悪夢にうなされ早朝覚醒も防げなかったことを記録し、日記を終える。